「お父さん、腎臓が悪いって先生に言われたって。食事に気をつけなきゃいけないみたい」
親からそんな連絡が来たとき、最初に浮かぶのは「何かしてあげたい」という気持ちではないでしょうか。
でも、一緒に暮らしていないから毎日の食事を管理してあげることはできない。料理を作りに行ける距離でもない。せめて何か送れないか、と思ってスマホを開いた——そういう方に、この記事を書きました。
調剤薬局・訪問薬剤師として13年以上働いてきた私が、「親に何を送ればいいか」という相談を家族の方から受けてきた経験をもとに、正直にお伝えします。
まず知っておきたい:「体にいいもの」が危険になることがある
腎臓病の食事制限で、多くの方が最初に驚くのがこれです。
「健康にいいと思っていたものが、腎臓病には逆効果」なことがあります。
特に注意が必要なのがカリウムです。腎臓の働きが落ちると、カリウムをうまく排泄できなくなります。血中カリウムが高くなりすぎると、不整脈や心停止の原因になることもあります。
カリウムが多い食品の代表例:
- バナナ・アボカド・メロン・キウイなどの果物
- ほうれん草・さつまいも・じゃがいもなどの野菜
- ナッツ類
- 「健康にいい」と言われる野菜ジュース・青汁
「親の体に良かれ」と思って果物や野菜をたっぷり送った結果、カリウムの摂り過ぎになってしまうケースは、薬局の現場でも耳にします。
また、塩分も要注意です。腎臓病では1日の塩分を6g未満(高血圧合併の場合も同様)に抑える必要があります。一見ヘルシーに見える干物や練り物は、意外なほど塩分が多いです。
「送ってはいけないもの」チェックリスト
- ❌ 果物(特にバナナ・メロン・キウイ・アボカド)——カリウムが多い
- ❌ 干物・塩鮭・明太子・練り物——塩分が多い
- ❌ 野菜ジュース・青汁・健康ドリンク——カリウム・リンが多いものがある
- ❌ サプリメント・健康食品——腎臓に影響するものがあるため、必ず主治医に確認が必要
- ❌ 漬物・梅干し・佃煮——塩分が非常に多い
⚠️ ただし、カリウム制限が必要かどうかは腎臓病のステージによって異なります。「果物が全員NG」ではありません。親の主治医や薬剤師に「カリウムを制限する必要があるか」を確認してから送るのが確実です。
では、何を送ればいい?
安全に送れるもの・喜ばれるものを整理します。
① 低たんぱく・減塩のパックご飯
腎臓病向けに作られた「低たんぱくご飯」は、通常の白米よりたんぱく質を大幅にカットしています。毎日のお米は食事制限の中心になるため、これを贈ることの実用性は高いです。
② 減塩調味料・低塩しょうゆ
「料理の味気なさ」は制限食が続かない最大の原因のひとつです。塩分50〜75%カットのしょうゆやめんつゆは、自炊する親にとって実用的なプレゼントになります。
③ 腎臓病向けの制限食宅配(最もおすすめ)
正直なところ、「何を送ればいいか」で一番悩まないですむのが、腎臓病向けに設計された宅配食です。
管理栄養士が監修し、塩分・たんぱく質・カリウム・リンを1食ごとに計算して作られた冷凍のお弁当を、自宅に定期的に届けてもらえます。
「これを送れば、栄養士が設計した食事が親のもとに届く」という安心感は、他の何を送るよりも大きいと思います。
親が自炊をするよりも、食事管理の精度が上がるというメリットもあります。自炊だとどうしても「なんとなく」になってしまいますが、制限食宅配なら1食ごとの数値がはっきりしています。
🍱 腎臓病向け制限食の宅配サービス
塩分・たんぱく質・カリウム・リンを管理栄養士が1食ごとに設計した冷凍弁当です。全国配送対応で、離れて暮らす親に定期的に届けることができます。
※食事の制限内容(塩分量・たんぱく質量など)は主治医の指示に従ってください。宅配食の種類を選ぶ際も、担当の医師・栄養士・薬剤師に相談されることをおすすめします。
薬剤師からひとこと
「一緒に暮らしていないから、食事の面倒を見てあげられない」と感じている方に伝えたいことがあります。
薬局で患者さんの家族の方とお話しすると、「遠くにいて何もできないのに」と自分を責めている方が少なくありません。でも、こうして調べて、考えて、「何かを送ろう」としている時点で、十分に親のことを思っています。
食事制限は、本人だけでは続けにくいものです。「家族が気にかけてくれている」という実感が、続ける力になることがあります。
何を送るかも大事ですが、「気にかけている」という気持ちが届くことも、それと同じくらい大切だと私は思っています。
監修者:槇由紀子(調剤・訪問薬剤師 / 薬局経営 / 薬剤師歴13年以上)
情報は執筆時点のものです。食事制限の内容は腎臓病のステージによって異なります。具体的な制限量は必ず主治医・管理栄養士にご確認ください。


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