調剤薬局・訪問薬剤師として13年以上働いてきた私が、今も忘れられない言葉があります。
60代の男性患者さん。高血圧で治療中で、医師から「塩分を減らしてください」と言われていました。奥さんが毎日、懸命に減塩料理を作っていました。
「美味しくないんだよね。毎日これじゃ、続けられないよ」
私はそのとき、なんと答えたか。「大変ですね」と言うしかありませんでした。正直に言うと、それ以上の言葉が出てこなかったのです。
今回は、あのとき言えなかったことを書きます。
塩分・たんぱく質制限が必要な人は、実はとても多い
「自分だけがこんなに制限されている」と感じている方がいるかもしれません。でも、同じ状況にいる人は、日本にとても多いです。
- 高血圧の方:推計約4,300万人(成人の3人に1人)
- CKD(慢性腎臓病)の方:推計約2,000万人(成人の5人に1人)
(出典:日本高血圧学会、日本腎臓学会 CKD診療ガイド2024)
高血圧・CKDどちらも、ガイドラインでは「食塩を1日6g未満に」とされています(高血圧治療ガイドライン2019 / CKD食事療法基準2014年版)。CKDではさらに、たんぱく質制限(体重1kgあたり0.6〜0.8g/日)も加わることが多いです。
塩分とたんぱく質、両方を毎日自炊で管理し続けることの大変さは、やってみた人にしかわかりません。
続けられない人が多いのは「意志の問題」ではない
「ちゃんと守れていますか?」——外来や薬局でそう聞かれたとき、正直に答えられない患者さんは少なくありません。
実際、たんぱく質制限のアドヒアランス(指示通り守れているか)を調べた研究では、約20%の人が指示量より多く食べてしまっているという結果が出ています(CKD診療ガイド2024第8章)。「守ろうとしているのに守れない」のは珍しくありません。
毎食の塩分を計算する。たんぱく質量を調べる。家族と別のメニューを作る。外食をほぼ断る。これを何ヶ月も、何年も続けることが、どれほど大変か。「大変ですね」と言うしかなかった薬剤師としての私の言葉は、嘘ではありませんでした。
それでも「効く」のはわかっている——だから続けたい
食事療法の効果は、データではっきり示されています。
食塩摂取量を1日4.4g減らすだけで、高血圧の方では収縮期血圧が平均5.39mmHg下がるとされています(He FJ et al. BMJ. 2013)。これは一部の降圧薬に匹敵する数字です。
「薬を増やしたくない」「数値を下げたい」——そう思うからこそ、食事制限を頑張ろうとします。効果があることはわかっています。問題は、続くかどうかです。
3ヶ月で「見た目でわかるほど」変わった患者さんの話
印象的な光景があります。
60代の糖尿病の男性患者さんが、3ヶ月ぶりに来局したとき、見た目でわかるほど痩せていました。「どうしたんですか?」と聞くと、奥さんが食事管理を徹底してくれたのだといいます。
「妻がぜんぶ計算してくれて。外食も断って、ずっと家で食べてた」
3ヶ月、続きました。ただそれだけで、検査値も、見た目も、はっきり変わりました。
この患者さんが続けられたのは、意志が強かったからではありません。続けられる「仕組み」があったからです。
続けられる人と続けられない人——差はなんだったか
13年の現場経験で感じてきたことがあります。
食事制限を続けられる人と続けられない人の差は、意志の強さではなく、周りの協力があるかどうかです。
一緒に計算してくれる人、同じメニューを食べてくれる人、外食に誘わずにいてくれる人——そういう存在がいる人は続きます。いない人は、一人で戦い続けることになります。
でも、一人暮らしの方、配偶者が仕事で忙しい方、家族に気を遣って「自分だけ別メニュー」が申し訳ない方——そういう状況の方に、「周りの協力を求めてください」とは言いにくいのです。
「周りに頼れない」なら、仕組みを使う
今なら、あの60代の患者さんに伝えられることがあります。
一人でも続けられる「仕組み」を持つことが、現実的な答えのひとつです。
管理栄養士が監修した制限食の宅配サービスは、その選択肢になりえます。自分で塩分を計算しなくていい。たんぱく質量を調べなくていい。作り分けしなくていい。レンジで温めるだけで、ガイドライン基準を満たした食事が毎日食べられます。
「楽をしているわけじゃない」。そう思わなくて大丈夫です。続けるために仕組みを使うのは、賢い選択です。
塩分・たんぱく制限に対応した宅配食
腎臓病・高血圧・糖尿病などの食事制限に対応した、管理栄養士監修の宅配食サービスです。1食ずつ個包装で届き、レンジで温めるだけ。塩分・たんぱく質・カロリーの計算が不要なため、制限食を無理なく続けやすくなります。
薬剤師として、正直に伝えること
「食事制限は、一人では続けられなくて当然です」——そう認めることが、続けるための第一歩だと思っています。
助けを借りることは弱さではありません。仕組みを使うことはずるではありません。大切なのは、続くことです。
続けた先に、あの患者さんのように「3ヶ月で見た目が変わる」という結果があります。
気になることがあれば、薬局の窓口にも声をかけてみてください。一緒に考えます💊
※この記事は薬剤師の経験に基づくもので、診断・治療を保証するものではありません。気になる症状は医師・薬剤師にご相談ください。
【参考】日本高血圧学会 / 日本腎臓学会 CKD診療ガイド2024 / He FJ et al. BMJ. 2013;346:f1325 / 高血圧治療ガイドライン2019


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