処方箋を受け取りに来られた患者さんが、カウンターの前で少し俯き加減のまま、声を落として話しかけてくれることがあります。
「できれば男性の薬剤師さんに代わっていただけませんか」——そう言われたこともあります。でもその日、私の薬局には男性薬剤師がいませんでした。
ED(勃起不全)に関する薬のことを、女性薬剤師に話すのはどれだけ勇気がいることか。その日の患者さんの表情を、今も忘れられません。
そのED治療薬として知られるシアリス(タダラフィル)が、薬局で市販されることになりました。「処方箋なしで買えるようになる」——この変化は、「誰にも言わずに自由に買える」という意味ではありません。むしろ逆です。
この記事では、シアリスの市販化について正確な情報をお伝えするとともに、なぜ「薬剤師への相談が必要か」を解説します。
シアリスの市販化:何が了承されたのか
2025年9月18日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会において、タダラフィル10mgを要指導医薬品として販売することが了承されました。製造販売はエスエス製薬が行う予定です。
これまでシアリスは医師の処方箋がなければ入手できない「処方薬」でした。今回の了承によって、薬局で購入できる医薬品へと移行する見込みです。
発売時期は2026年内を見込んでいますが、現時点では具体的な日程は未定です。
「要指導医薬品」とは何か——ネットでは買えない
今回シアリスが移行するのは「要指導医薬品」という区分です。市販薬(OTC)の中でも、最も厳格な管理が求められる区分です。
要指導医薬品には次のようなルールがあります。
- 薬剤師による対面での情報提供が義務(省略不可)
- インターネット販売・郵送販売は禁止
- 薬剤師のいる薬局・ドラッグストアでのみ購入可能
つまり、「処方箋が不要になる」ことと、「誰でも自由に買える」ことは同じではありません。薬剤師のいる店舗に行き、対面で確認を受けてから購入する、というプロセスは残ります。
なぜ薬剤師への相談が必要なのか
シアリス(タダラフィル)は、一部の薬との組み合わせによって、命にかかわる副作用が起こる可能性があります。
絶対に一緒に使ってはいけない薬(禁忌)
最も重要なのが硝酸薬(ニトログリセリン・ニトロペン・硝酸イソソルビドなど)との併用禁忌です。
硝酸薬は狭心症の薬として広く使われています。シアリスと一緒に使うと、血圧が急激に低下し、意識を失ったり、最悪の場合は生命の危険につながる可能性があります。
「狭心症の薬を飲んでいる方」には、絶対に使用できません。また、同系統のPDE5阻害薬(バイアグラ・レビトラ等)との重複使用も禁忌です。
主な副作用
- 頭痛(最も多い)
- 顔面紅潮・体のほてり
- 鼻閉(鼻づまり)
- 消化不良・胸焼け
- 血圧低下
高血圧や心臓の病気がある方、複数の薬を服用している方は、自己判断での使用は避けてください。
薬剤師に伝えること
購入時に薬剤師から確認されることは、おおむね次のとおりです。
- 現在服用中の薬の有無(特に狭心症・降圧薬)
- 心臓・肝臓・腎臓に問題がないか
- 過去にPDE5阻害薬を使ったことがあるか
「恥ずかしいから早く終わらせたい」という気持ちはよく分かります。でも、この確認は形式ではなく、安全に使うための必須プロセスです。
「薬局で買えるなら、もういいか」と思っている方へ
市販化によって「薬局で気軽に買えるようになった」と感じる方もいると思います。
でも実際のところ、薬局カウンターでのやり取りがどうしても抵抗感のある方もいます。特に女性薬剤師しかいない薬局では、あの日の患者さんと同じ思いをされる方もいるかもしれません。
そういった方に知っておいてほしいのが、EDのオンライン診療です。
処方薬としてのシアリスを使いたい方、自分の症状をまず医師に相談したい方は、スマートフォンだけで完結するオンライン診療で、自宅から受診・処方・配送まで対応できます。
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対面での相談が難しい方に。スマートフォンで受診・処方・配送まで対応。薬局に行かずに医師の診察を受けられます。
※処方はすべて医師の判断によります。自己判断での服用はしないでください。
薬剤師からひとこと
「男性薬剤師に代わってほしい」と言われた日のことを、今でもよく思い出します。
その方が言いたかったのは、「あなたに話したくない」ではなく、「こういう話をするのがつらい」ということだったと思います。
シアリスが市販化されることで、「誰にも言わずに買える」という選択肢が増えるかもしれません。でも、安全に使うための確認は省けません。
薬剤師は、聞きにくいことを聞かれることに慣れています。恥ずかしいと思うことも、全部含めて教えてもらえると、より安全なアドバイスができます。
市販化の後も、薬剤師との短いやり取りが、あなたを守る最初の一歩です。
監修者:槇由紀子(調剤・訪問薬剤師 / 薬局経営 / 薬剤師歴13年以上)
情報は執筆時点のものです(2026年5月)。製品の発売日・価格・分類等は変更になる可能性があります。服薬については必ず薬剤師または医師にご相談ください。


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