5月から変わった!市販薬OD規制を薬剤師が解説

市販薬の選び方

「ドラッグストアで急に年齢確認された」「18歳未満は1箱しか買えないって、なぜ?」

2026年5月1日、改正薬機法が施行され、市販薬の購入ルールが大きく変わりました。調剤薬局・訪問薬剤師として13年以上働いてきた私が、現場の目線からこの新ルールの中身と、その背景にある問題を正直にお伝えします。

この記事でわかること

  • 5月から何がどう変わったか
  • 規制の対象になった8成分とは
  • 市販薬のオーバードーズ(OD)の実態
  • 薬剤師が現場で感じた「規制の穴」
  • 薬剤師として、一番伝えたいこと

5月1日から何が変わった?

改正薬機法により「指定濫用防止医薬品」という新しい区分が設けられました。これにより、対象成分を含む市販薬を購入する際には、以下のルールが適用されます。

  • 18歳未満への販売制限:小容量(5〜7日分)1箱のみ販売可
  • 年齢・氏名・他店での購入状況の確認:薬剤師・登録販売者が必ず確認
  • 過剰摂取に関する情報提供:窓口での説明が義務化

ドラッグストアでいきなり「年齢確認できるものを見せてください」と言われて困惑した方がいれば、これが理由です。

対象の8成分——これが含まれていたら要注意

今回「指定濫用防止医薬品」に指定された8成分は以下のとおりです。

成分名 含まれる薬の例
エフェドリン 気管支拡張系の総合感冒薬
コデイン 咳止め薬(強めのもの)
ジヒドロコデイン 咳止め薬
ブロモバレリル尿素 鎮痛薬(ナロン錠等)
プソイドエフェドリン 鼻詰まり改善の総合感冒薬
メチルエフェドリン 咳止め系の総合感冒薬
デキストロメトルファン(2026年新規追加) 咳止め薬
ジフェンヒドラミン(2026年新規追加) 睡眠改善薬(ドリエル等)・花粉症薬

ODリスクが報告されている市販薬の具体例

「8成分と言われても、どの薬のことか」と思う方も多いと思います。ドラッグストアで目にする身近な薬の中にも、過量摂取が問題になっているものがあります。

① ブロン錠(エスエス製薬)——乱用例が突出して多い咳止め薬

ジヒドロコデインリン酸塩・dl-メチルエフェドリン塩酸塩・クロルフェニラミンマレイン酸塩・無水カフェインを含む市販の咳止め薬です。今回の「ブロン中毒」の項でも触れたとおり、乱用例が突出して多い薬として知られており、1日に1〜2瓶(84錠入り)を服用してしまうケースも報告されています。

② ウット(大昭製薬)——過量服薬で意識障害・救急搬送のリスク

ブロモバレリル尿素・アリルイソプロピルアセチル尿素・ジフェンヒドラミン塩酸塩を含む鎮静薬です。「眠れない夜に」と手に取りやすい薬ですが、過量服薬で意識障害を起こして救急搬送されるケースが報告されています。大量摂取では強直間代性発作(けいれん発作)を起こすこともあり、決して軽視できません。

③ ナロンエースT(大正製薬)——鎮痛薬でも肝・腎障害のリスク

ブロモバレリル尿素・イブプロフェン・エテンザミド・無水カフェインを含む鎮痛薬です。「頭痛薬だから大丈夫」と思いがちですが、ODにより胃潰瘍・肝障害・腎障害を起こすことがあります。複数の成分が重なるぶん、臓器への影響も複合的になります。

④ デキストロメトルファン系の咳止め薬——SNSで広まり乱用急増

2026年の改正で新たに指定濫用防止医薬品に追加されたデキストロメトルファンを含む咳止め薬です。高用量では解離症状や幻覚が現れることが知られており、SNSで「トリップできる」として若者の間に広まり、近年乱用が急速に増えています。パッケージからはリスクが伝わりにくく、注意が必要な薬のひとつです。

なぜ規制が必要になったのか——OD(過剰摂取)の実態

近年、市販薬を治療目的ではなく「気持ちを変えるため」に大量摂取する若者が急増しています。

国立精神・神経医療研究センターの2021年の全国高校生調査では、高校生の1.6%が乱用目的で市販薬を使用した経験があると回答しています(出典:国立精神・神経医療研究センター「薬物使用と生活に関する全国高校生調査2021」)。

さらに、10〜20代の薬物使用に占める市販薬の割合は、2022年には65.2%に達しています。2014年に危険ドラッグが中心だった頃と比べると、驚くほどの変化です。「ドラッグストアで手軽に買える」という利便性が、逆に問題を深刻にしているといえます。

現場で見た「ブロン中毒」——繰り返し買いに来る常連

薬局の窓口で働いていると、同じお客さんが短期間に何度も同じ薬を買いに来ることがあります。私自身が現場で気になっていたのは、ジヒドロコデインを含む咳止め薬(いわゆるブロン)を繰り返し購入しに来る常連のお客さんでした。

「ブロン中毒」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。ブロン(エスエス製薬のブロン錠など)は、ジヒドロコデインリン酸塩・メチルエフェドリン塩酸塩・クロルフェニラミンマレイン酸塩・カフェインを含む市販の咳止め薬です。かつてから乱用例が突出して多い薬として知られており、薬剤師の間では問題意識が高い薬のひとつです。

なぜ依存してしまうのか

ジヒドロコデインはオピオイド系の成分で、脳内の受容体に作用して鎮痛・鎮咳効果をもたらします。ところが、治療量を超えて服用すると多幸感や不安・緊張の軽減といった効果が現れ、「仕事や家事への意欲が高まる」「気持ちがラクになる」と感じる人がいます。この感覚を求めて用量を超えた服用が始まり、やがて「コントロール障害」の状態——やめたくてもやめられない状態——に陥ります。

依存が形成されると、急に飲むのをやめたとき(退薬)に筋肉痛・関節痛・下痢・嘔吐・悪寒といった身体的な離脱症状が出ます。これがまた「飲むとラクになる」という悪循環を生みます。重症例では1日に1〜2瓶を過量摂取するケースも報告されています。

窓口でその常連のお客さんを見ながら、声をかけるべきか迷ったことを今でも覚えています。今回の規制で「他店での購入状況を確認する」義務が生まれたことで、こうした場面に対応しやすくなった部分はあると感じています。

薬剤師が感じる「現制度の限界」

今回の改正では、販売時に「他の店舗で購入していないか」を口頭で確認することが義務付けられました。購入者の氏名・年齢の確認に加え、他店での購入状況を聞いて販売記録を残す、という流れです。

ただし、現時点では店舗間で購入履歴を共有するデータベースの仕組みはありません。確認はあくまで口頭であり、購入者が虚偽を申告した場合は確認できないのが実情です。「何個でも買える」とまでは言えませんが、制度の実効性は購入者が正直に答えることを前提にしている部分があります。

現場の薬剤師として言えば、今回の施行は「確認を義務化した第一歩」です。店舗をまたいだ購入履歴の一元管理など、仕組みとしての整備が今後の課題だと感じています。制度が変わっても、購入者の様子に最初に気づけるのは窓口の薬剤師です。気になることがあれば、ぜひ声をかけてみてください。

薬剤師として一番伝えたいこと

「市販薬だから安全」は思い込みです。

ブロモバレリル尿素もジフェンヒドラミンも、脳や神経に作用するから「気持ちが変わる」と感じます。用量を超えると呼吸抑制・意識障害のリスクがあり、繰り返し使うことで依存が形成されます。

もし家族や身近な人が「市販薬を大量に持っている」「繰り返し買いに行く」ことが気になったら、薬を取り上げることより先に、「何かあった?」と話を聞いてあげてください。ODの多くは、痛みや生きづらさの裏返しです。かかりつけ薬剤師や医療機関に相談することで、状況を変えるきっかけになります。

薬の管理を見直すきっかけに

薬を正しく管理することも、ODリスクを減らす一歩です。お薬手帳や処方薬・市販薬をまとめて管理できるケースを使うと、飲み合わせの確認も薬剤師に相談しやすくなります。

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市販薬を選ぶ際は、薬剤師に相談しながら自分に合ったものを見つけることが大切です。最近はオンライン薬局でも薬剤師に相談しながら購入できるサービスが増えています。忙しくて薬局に行けないときや、じっくり相談したいときに活用してみてください。

この記事は薬剤師が一般的な情報をお届けするものです。個別の症状や服薬については、必ず処方医・薬剤師にご相談ください。

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